超ひも理論の紹介

Newton2017年1月号から超ひも理論の紹介です。

超ひも理論とは簡単に言うと物質の最小部品はひもであるという考えです。物質の最小構成要素である素粒子が大きさを持たない点では無く長さを持つひもでできていると考える理論です。

超ひも理論は素粒子を点ではなく超高速で振動するひもであると考えることで現代物理学の2大基礎理論である相対性理論と量子論の統合を可能にし、宇宙の謎を解き明かす手がかりとなる物理学の理論のようです。(紙面を参照し一部補足)

1.素粒子とは何か

物質を分割していくと分子になり分子は水素や炭素などの原子から構成されています。その原子は原子核と電子でできており、原子核は陽子と中性子が集まってできています。その陽子と中性子はアップクオークとダウンクオークという粒子からできていることがわかっています。このアップクオークとダウンクオークはこれ以上分割できないものだと現在のところ考えられております。これらは物質の最小部品であり素粒子と呼ばれるものです。素粒子は物質を構成する電子のような粒子(フェルミオン)と、力を伝える際に媒介する光子のような粒子(ボソン)の大きく2つに分かれます。

2.素粒子を構成するのはひも

素粒子は現在発見されているものでも17種類あるようです。タウニュートリノも素粒子の1種類ですし、電子も素粒子に分類されます。光は光子という素粒子でありこれは前述の力を媒介するボゾン粒子らしいです。
超ひも理論ではひもは1種類のみです。ひもには大きく分けて閉じたひもと開いたひもの2種類があるようです。現在発見されているほとんどの粒子は開いたひもらしく、未発見の重力の力を媒介する重力子が閉じたひもになっているようです。
物質の違いは構成する素粒子の違いからもたらされるようですが、素粒子の違いは閉じたひも
開いたひもの違いと、それぞれ振動の種類や振動の速さの違いからもたらされるようです。さらに振動の種類には節の数の他に、ひもがどの次元で振動するかの違いもあるようです。
我々が感知できるのは3次現の空間までですが、ひもは9次元で振動すると理論上考えられているのです。素粒子を構成するひもの長さは10のマイナス33乗~マイナス35乗の範囲で太さは無いと想定されています。ひもは1秒間に10の42乗回振動すると考えられており、これはひもの端では光速に近い速さで振動していることになるようです。これが超ひも理論の概要です。

Newton1月号30-31ページサンプル

3.超ひも理論はなぜ生まれたのか

素粒子を点として長さ大きさを持たないとした場合、電子が及ぼす電磁気力は大きさがゼロの点とすると無限大の力を持ってしまうことになり無限のエネルギーがあることになります。相対性理論のE=MC2乗により無限大のエネルギーは無限大の質量があることになります。電子の質量が無限大であるとその場から動けなくなりますので電気は決して流れることはないのですが現実はそんなことはありません。現実と矛盾することから素粒子は大きさゼロの点では都合が悪いことがわかりました。当初はこの矛盾に対して計算方法で大きさのない点としても矛盾が生じないようにしました。これが朝永振一郎らによるくりこみ理論です。
1970年代にはこのくりこみ理論を使用し、素粒子は大きさを持たない点であるとの前提で素粒子物理学は発展をとげました。この理論は標準理論とよばれ自然界の根源的なルールを正しく表現できる理論とされていました。

しかし、1980年代になり標準理論は、自然界の4つの力の統合で限界が訪れます。標準理論で統合できるのは、「電磁気力」と「強い力」と「弱い力」の3つまでで、4つ目の「重力」を統合しようとすると計算が合わないのです。この標準理論の限界は、素粒子を大きさを持たない点とし、くりこみ理論で矛盾を解消した限界を意味します。この限界を突破する可能性を秘めたのが素粒子をひもと考える超ひも理論です。

ひも理論の原型は1960年代に南部博士により複数の素粒子の集まりであるハドロンの種類の違いをひもの振動の違いで説明できるとして提唱されたのが始まりです。この理論はハドロンが複数の素粒子から構成されるとの理論の登場で廃れました。しかし1970年代にひもの可能性を信じて研究を続けた人々により、素粒子を点では無くひもだと考えると重力を含む4つの力を取り扱うことができる可能性があることが明らかになりました。その後、ひも理論に存在していた理論的な矛盾はシュワルツとマイケルグリーンの発見で解消され、これにより超ひも理論の研究が一気に盛んになりました。現在のところ、超ひも理論は4つの力(電磁気力、弱い力、強い力、重力)を同時に取り扱える唯一の素粒子理論として、理論の完成に向けて盛んに研究が続けられています。

4.所感

超ひも理論は、学生の時にブルーバックスで手に取って読んで興味をもっていました。当時は量子力学を学んでいたこともあり、重力を含めた4つの力を統一した大統一理論との触れ込みに興味を引かれたから手に取ったのだと思います。当時の超ひも理論では12次元の宇宙が前提だったと記憶しています。最新の研究では9次元になったようですが、いずれにしても空間と時間を含めた4次元の世界だと我々が認知していたこの世界が、9次元というもっと高次元に渡って存在しているということがSFの中ではなく、現実の理論として語られることは画期的であり感慨深いものです。
ですが、この素粒子がひもでできているという理論は、その証拠が観測された訳でもなく数学的に矛盾がないという証明がなされたものでもありません。ただ、そのように考えると計算がうまくいくというまだまだ研究途中の理論のようです。
ですが、4つの力を統一して扱えるただ一つの理論として世界中で注目され研究が進んでいるようですので明日にでも大きな発見があり状況が変わるのかもしれません。
超ひも理論の研究成果がどこに行きつくのか、身近なミクロの世界から遠い宇宙までを統一して説明できる大統一理論とはどのようなものなのかは大変興味がありその動向をこれからも注視していきたいと思っています。

我々は音楽を聴いて感動しますが、その真の理由は、自分自身の構成要素が振動するひもでありそこが共鳴するからなのかも知れません。全くの私見ではありますが。

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